コロナ禍だからこそ、エンターテインメントを。映画監督・俳優をも巻き込み、グッドデザイン賞を受賞した「ドライブインシアター2020」の舞台裏に迫る

コロナ禍だからこそ、エンターテインメントを。映画監督・俳優をも巻き込み、グッドデザイン賞を受賞した「ドライブインシアター2020」の舞台裏に迫る
コミュニケーション領域のFAST COMPANYとして「いいモノを世の中に広め人々を幸せに」というビジョンを掲げるベクトルグループ。コミュニケーションを軸に世の中の流れを捉えた様々な事業・サービスを展開することにより、常に進化を続けています。「Works」ではベクトルグループが、協業するパートナーと共に創り上げ話題となったプロジェクトについて、その背景のストーリーを対談形式でお届けします。

コロナ禍で多くのイベントが中止になる中、今こそエンターテインメントの力で多くの人に夢を与え、世の中を応援したいと「ドライブインシアター2020」実現に向け走り続けていたチームがあります。その中心となったのが株式会社ハッチのシアタープロデュースチーム「Do it Theater」の代表を務める伊藤大地氏と、株式会社プラチナムの村山聡一氏です。構想から約10日で立ち上げたクラウドファンディングは大きな反響となり、映画監督・俳優・アーティストなど錚々たる方々からの賛同とコメントが寄せられるほど、大きなうねりとなりました。グッドデザイン賞を受賞するほどのプロジェクトはどう生まれ、どう実現したのか。その熱狂の舞台裏を追いました。
伊藤 大地
株式会社ハッチ シアタープロデュース事業部
「Do it Theater」代表 伊藤 大地

1986年生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科卒。Do it Theater(株式会社ハッチ シアタープロデュース事業部 )代表。日本国内ドライブインシアター復活の礎となった「ドライブインシアター浜松」(2014)をはじめ、累計6万人を動員する野外映画イベント『品川オープンシアター』、横浜みなとみらいを舞台とした野外シアターフェスティバル『シーサイドシネマ』などの映画イベントを軸に、ムービーやインタラクティブコンテンツなどジャンルレスにプロデュースを行う。現在は、この時代におけるエンターテインメントの提案として『ドライブインシアター2020』全国4箇所で開催中。
村山 聡一
株式会社プラチナム

1989年生まれ。東京理科大学建築学科を卒業後、ベクトルグループ 株式会社プラチナムに入社。クリエイティブエージェンシーに出入りしながら、あらゆる領域を越境してPRプロデュースする。受賞歴にSpikes Asia、NEWYORKFETIVALSなど。モットーは「ピンチは、チャンス。」
参照元: YouTube

きっかけは国連からの呼びかけ。コロナ禍でもエンターテインメントは必要との使命感から、猛スピードでプロジェクトを発足

「ドライブインシアター2020」プロジェクト発足の経緯を教えてください。

村山:新型コロナウイルス感染症の深刻さを世界中が認識し始めたころ、国連から世界中のクリエイティブ産業従事者に向けて、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘い~国連からのクリエィティブ産業の協力を求めるグローバルな呼びかけ~」と題した、6つのアクション(キーメッセージ)を促進するためのコンテンツ公募がリリースされました。私はその情報をSNSで知ったのですが、世界中の人が困っている今だからこそ、この課題に対するソリューションを自分が提案したいと思いました。
1週間程考えていたのですが、昨年食事会でご一緒していた株式会社ハッチの伊藤さんが「ドライブインシアター事業をやっていたことを思い出し、「これだ!」と閃いたんです。その場ですぐに、伊藤さんに連絡をしました。忘れもしない、3月30日。新型コロナウイルス感染症で亡くなった方のニュースが連日報道され、緊急事態宣言が発令されるかもしれないと言われていたタイミングでした。先が見えず、深刻なニュースばかりで世の中全体が暗く落ち込んでしまっていた中でしたが、そんなコロナ禍の今だからこそ、エンタメが絶対に必要な存在になる。今、エンターテイメントの火を絶やさないために、ドライブインシアターをひとりでも多くの人に届けるべきだという使命感が生まれました。

「これから先、ソーシャルディスタンスを確保したエンターテインメントが必ず必要になる。ドライブインシアターはそのソリューションになるはず。だから一緒にやろう!」と伊藤さんに声をかけ、その日のうちにオンラインで打ち合わせを行いました。

伊藤:ドライブインシアターの存在は、以前観た海外の映画で知りました。当時から、絶対に日本にもあった方がいい文化だと思っていたので、最初は個人事業として始めていました。ある時そのことを社長に伝えたところ、「それなら社内プロジェクトとしてちゃんと屋号を持って取り組みなさい」と言われ、誕生したのがシアタープロデュースチーム「Do it Theater」です。初回プロジェクトの実積を受けて、会社がこの取組みに理解を示してくれて事業化できました。

コロナ禍になり、ソーシャルディスタンスを確保できるエンターテインメントといえば、ドライブインシアターでしょう!という気持ちはありましたが、世の中がセンシティブになっていた時期でもあり、会社として取り組んで大丈夫なのかどうかを慎重に検討していました。まさにそのタイミングで、村山さんが「今やりましょう!」って言ってくれて、すぐに動き出したんです。
村山:それからは毎晩、オンライン会議を行いました。伊藤さんをはじめハッチ社のメンバーと外部協力者の計6名程のチームでした。コロナ禍における世の中の風潮を考慮しつつも、これまでに創り上げてきたドライブインシアターの世界観やこだわりを大事にし、どうすれば最も良い形で開催できるのか考え抜きました。

検討を始めた早い段階で、クラウドファンディングを実施することは決まっていました。「Do it Theater」が2014年に浜松で開催したドライブインシアターは、クラウドファンディングによって実現したものだったので抵抗はありませんでしたし、参加者が一緒に創り上げていく形にすれば必ず応援してもらえると思っていました。また、国連が求めるテーマのうちのひとつが「寄付」で、その要件を満たす意図もありましたね。

伊藤:実は、プロジェクトメンバー数人の気持ちだけでは社会を説得できないと思っていたんです。だからこそ、多くのいろんな人に応援してもらって、その熱量を世の中に届ける必要があると思っていました。ドライブインシアターは絶対に世の中に必要なものだと思っていましたが、社会からの承認が得られることでプロジェクトはもっと大きくできる、という気持ちもありました。

村山:伊藤さんに連絡した3日後には「今こそ、ドライブインシアターを一緒につくろう」というステートメントをつくり、4月10日にはクラウドファンディングを立ち上げました。いつ開催できるのかもわからない、なにも決まっていない状況で資金を集めるのには勇気もいりましたが、その過程もサポーターと一緒に乗り越えるといいのではと思ったんです。

想像以上の大反響で映画監督からコメントも。第1回は東京のシンボル、東京タワーで開催

クラウドファンディングの反響はいかがでしたか?

村山:いやー、凄かったですよね。

伊藤:凄かったです。初めてこんなに大きな反響をもらいました。

村山:お客様からの反響も大きかったですし、映画監督や俳優、アーティストの方々にも、たくさん応援してもらえました。危機感を持っていたエンタメ業界の方々も我々の取り組みに賛同してくれて、それをきっかけに「ドライブインシアター2020」の取り組みががどんどん広がっていきました。第1回を東京タワーで開催した時の上映作品が『スパイダーマン:スパイダーバース』と決まってからは、その監督を務めたピーター・ラムジー氏からコメントが来たりもして、途中からは我々の想像を超えて勝手にどんどん大きくなっていきましたね。

また、「ソーシャルディスタンスと寄付の仕組みを兼ね備えたエンターテインメント」として、ドライブインシアターの必要性を国連に提案したところ、コロナ禍におけるクリエイティブコンテンツのひとつとして、国連の特設サイトで紹介されたりもしました。

準備段階で特に気をつけたことを教えてください。

村山:まずは新型コロナウイルス感染症対策です。これは伊藤さんが最も危機感を持っており、一度何かあって失敗してしまうと、今後の開催が難しくなるだけでなく、他のドライブインシアターにも迷惑をかけてしまいます。できるかぎり早く開催したいと思っていましたが、感染症対策は慎重に時間をかけて進めていきました。

伊藤:緊急事態宣言中にもイベントを開催しようとしている人たちはいましたが、我々はそれはしませんでした。世の中の状況を適切に捉え、お客様に安心して参加してもらえる状態で実施するのがエンターテインメントだと考えていましたので。ちゃんとみんなが納得できる形でイベントを成立させることにプライドを持っていました。

6月20日に東京タワーでの公演を成功させていますが、どのような経緯だったのか教えてください。

伊藤:結構大変でしたね(笑)。実は、もともとは第1回目を大磯ロングビーチで行う予定でした。常設のスクリーンが国内で一番最後まで残っていた場所で、それを復活させる形で開催する予定だったんです。しかし、運営会社が自粛に入り、自粛延長もあって当初予定していた開催日から大幅に遅れることになりました。そこで、別の場所を探していたところ、我々の活動を知ってくださった東京タワーの方から「東京タワーで開催しませんか?」と連絡をいただいたんです。

村山:結果的に、一番最初に東京のシンボルで開催できたことは非常に良かったと思っています。

東京タワー開催にはアーティストの方にも参加してもらって、目の前でライブも行いました。お客様には、ハザードやスマホをペンライト代わりに点灯してもらったのですが、会場全体に一体感が生まれて、盛り上がりました。

伊藤:この開催あたりから徐々に日毎の新規感染者数や、世の中の警戒意識が落ち着いてきて、日常生活を少しずつ取り戻せるようになってきていました。「東京タワーでエンターテインメントができた」という事実を創れたのは、明るい兆しを示す意味でも良かったのかなと思っています。

このチームだからこそ、多くの人に熱量が届くプロジェクトが誕生した

村山さんも最初は個人プロジェクトとして始められたのですよね。

村山:そうですね。ただ始めてすぐに「こういうことをやろうとしてます」と先輩に話したら、「それはぜひ全社会議で発表してほしい」と言われたんです。プラチナム代表の吉柳にも「社会的に意義のある活動をすることには大賛成」とあと押ししてもらい、その後すぐに社内横断のプロジェクトとして取り組んでいくことになりました。

このタイミングからから、宮下という、自らが自動車レースに参加するほど車好きなメンバーにもプロジェクトに参画してもらい、運営をサポートしてもらっています。最初は、車が好きだからドライブインシアターもきっと好きだろうと思い、声をかけました。すると、ミーティングにも毎回必ず参加してくれ、イベント当日には、バッテリーが上がった参加者の車を修理するというやりがいも見つけているようです(笑)。
宮下は、車離れとも言われる若者層をはじめ、もっと多くの人にモビリティの良さを知って欲しいと常々思っているんです。そんな彼にとって、ドライブインシアターはバチっとハマり、自発的にプロジェクトに関わってくれています。

伊藤:個人的には、宮下くんの発言に心を動かされる瞬間が何度もありました。チームメンバーは私を含め、車好きというよりは映画好きがきっかけで関わっている人がほとんでです。ある日宮下くんに「なんでそんなに車が好きなの?」って聞くと、「みんなを連れてどこまでも行けるじゃないですか」と無邪気に言われて、その発想は無かったなと感動しました。車を愛する彼のおかげで、車があるからこそ体験できるエンターテインメントとして、僕らのドライブインシアターがアップデートされましたね。

今回、プラチナムの村山さんと一緒にプロジェクトを進めてみていかがでしたか?

伊藤:我々は考えて、創り上げることは得意領域としてやっていたのですが、その情報を届けるところまではカバーできていませんでした。今回、村山さんに入ってもらって、情報や熱量を世の中の人々にどう届けるのかを間近で学ばせてもらい、届けるためにはどんな形にすべきなのか、と逆方向の時系列から考えられるようになりました。そして、実際の反応からより精度の高い逆算ができるようになる、という良い循環が生まれていると思います。

その後、どのような場所で開催されていますか?

伊藤:東京タワーに続いて大磯ロングビーチ、大阪の万博記念公園など全国で開催していて、ありがたいことにたくさんの方にご参加頂いています。若い世代から親世代まで、幅広い年代の方々が参加してくれていて、数多くあるエンタメのなかでも、世代を選ばないという意味ではレアなコンテンツなのかなと思います。近くにお住まいの方だけでなく、わざわざ遠方から参加される方もいらっしゃいますね。
村山:ビジネスとしても成立させるため、企業様に協賛頂いているほか、来場者には感染対策グッズとともに、協賛社様のアイテムを詰め込んだボックスを提供しています。

これらの取り組みは「感染予防啓発と寄付活動も含めた意義ある取り組み」としてグッドデザインを受賞しました。2020年という大きな変化が訪れた年に、このような評価をいただき、ぼくらの活動をさらに後押ししてもらえている気がしています。これらの時系列での細かい展開は、プラチナム社のnoteでも紹介しています。SNSから振り返る当時の展開も臨場感がありますので、ぜひご覧ください。

「こうなったらいいな。」という未来や理想を、仕事を通じて生み出していきたい

今後の展望を教えてください。

伊藤:2020年12月からは、神奈川県横須賀市にある長井海の手公園にてドライブインシアター常設会場をオープンします。コラボレーションいただく企業と調整を進め、月1回ほど開催していきたいと思っています。ドライブインシアターを体験したい時に気軽に行けるような場所にして、この文化自体をもっと日常的なものにしたいと考えています。観光や地元企業など地域とどう連携していけるか検証していきたいです。

その第1弾として12月25日〜27日に、クルマのサブスク「KINTO」とのコラボで「ドライブインシアター2020 meets KINTO」を開催します。地域と密着しながら、モビリティの可能性を引き出せるようなチャレンジをしたいと思っています。
村山:ドライブインシアターを一過性のものにせず、文化として根付かせていきたいという想いは、一緒にプロジェクトをスタートした頃からずっとありました。個人的にも、単発のイベントというより、ビジネスとして成り立つところまで一緒にやり切りたいと思っています。

常設会場は「ドライブインワンダーシアター」という名前がついていて、毎月テーマやコラボレーションのパートナーが変わると面白いねという話をしています。映画祭×ドライブインシアター、音楽×ドライブインシアターなど色々な側面を見せられると理想的だと思います。

また、我々としてはエンターテインメント全体を活性化させたいと思っているので、コンテンツは映画でなくても良いと思っています。国内でもドライブインスタイルでお笑いライブをやっていたり、音楽ライブをドライブインで開催するなど、可能性はたくさんあると思いますので、我々が今知らない形にも挑戦していきたいですね。

伊藤:そうですね。逆に、ドライブインシアターに合わないものはあまりない気がしています。車がシールドになって感染症の予防ができるので、例えば球場でやっていたことをスクリーンコミュニケーションに変えればイベントを実現できますし、ゲームやEスポーツもできると思います。人が集まって一緒に熱狂する機会を、ドライブインシアターが広げていけないかチャレンジしていきたいです。

最初は、コロナ禍でも体験できるエンタメという点からの想起だったと思うのですが、ここまでのめり込んだ理由はなんなのでしょうか?

村山:理由はいくつかあるのですが、まず、一緒にやっているメンバーが面白くて楽しい。そして、ドライブインシアターって、めちゃくちゃエモいんです。映画館とはちがう、体験としてずっと記憶に残っていくような魅力があります。僕は「こうなったらいいな」という理想や未来を、仕事を通じて創っていきたいと思っていて、そのひとつがドライブインシアターですね。

このプロジェクトは、今や僕にとってのライフワークだと思っています。ご飯を食べるためにする仕事はライスワーク、自分の人生にとっての仕事はライフワーク、社会にとって良い仕事はライトワークだと聞いたことがあるのですが、自分にとって、これはライトワークでありライフワークでもあると思うのです。だから、もう突き進むのみです。

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