「そのブランドがそのメッセージを発信する意味は何か?」プラチナム×メルカリ「読むレジ袋」を成功に導いた、これからのPRに必要な“問い“とは

「そのブランドがそのメッセージを発信する意味は何か?」プラチナム×メルカリ「読むレジ袋」を成功に導いた、これからのPRに必要な“問い“とは
「運命の出会いを、ヒトとモノとコトの間に」という世界観を掲げるベクトルグループ。コミュニケーションを軸に世の中の流れを捉えた様々な事業・サービスを展開することにより、人々の暮らしに彩と運命の出会いを添えるべく、常に進化を続けています。「Works」ではベクトルグループが、協業するパートナーと共に創り上げ話題となったプロジェクトについて、その背景のストーリーを対談形式でお届けします。

今回取り上げるのはベクトルグループの株式会社プラチナムが、株式会社メルカリ(以下、メルカリ)と共同で仕掛けた「読むレジ袋」の無料配布プロジェクト。これは、通常は捨てられてしまうレジ袋に新たな価値を与える試みで、SNSを中心に話題になり、多くのメディアにも取り上げられました。このプロジェクトにはどんな狙いがあり、どう実現させたのか。プロジェクトを牽引した、メルカリの韓 昇勲氏とプラチナムの濱村 裕也氏にお話しを伺いました。
韓昇勲
株式会社メルカリ PRスペシャリスト

1986年生まれ。2013年立命館アジア太平洋大学卒業後、2014年株式会社ベクトル入社。メディア企画、コンサルタントなどを経験し、年間20件ほどのプロジェクトを担当。2018年12月株式会社メルカリに入社。フリマアプリ「メルカリ」のプロダクトPR担当として、主にメディア戦略及びマーケティング、オフライン施策などに従事。2019年8月よりスマホ決済「メルペイ」のPRも兼任。
濱村 裕也
株式会社プラチナム PRプランナー

2009年に株式会社プラチナムに入社。PRディレクションに従事し、SNS発達におけるPRのデジタル化に合わせ徹底的に生活者アングルでブランド価値向上とマーケティングに直結する本質的なPR活動に向き合う。SNS上で言の葉に乗るPRアングルでのバイラルコンテンツ設計を得意とし、ナショナルクライアントからスタートアップまで業界・企業規模問わず、社会的な課題や世の中に隠れたインサイトを見つけ、PRをデザイン。コミュニケーション設計におけるPRの新たな価値を提案している。

「そのブランドがそのメッセージを発信する意味は何か?」プラチナム×メルカリ「読むレジ袋」を成功に導いた、これからのPRに必要な“問い“とは|株式会社プラチナム 濱村裕也 × 株式会社メルカリ 韓昇勲

参照元: YouTube

「身の回りのモノ一つひとつに価値がある」 社会課題解決と合わせた発信で、コンテンツに意味を持たせる

「読むレジ袋」はどんなプロジェクトなのか教えてください。

韓:「読むレジ袋」とは、レジ袋に伊坂幸太郎氏、吉本ばなな氏、筒井康隆氏の短編小説を印字したもので、レジ袋有料化直前の2020年6月24日〜26日の3日間限定で全国のナチュラルローソン138店舗にて無料配布しました。それぞれの小説は、モノにまつわるストーリーを通じてモノの価値を伝えるプロジェクト「モノガタリ by mercari」で連載されたものでもあります。

レジ袋は国内で年間450億枚消費されていると推定されており、そのほとんどが使用後に捨てられています。レジ袋に小説という新たな付加価値を加えることで、消費者に「身のまわりのモノにも一つひとつに価値がある」と気づきを与え、モノとの向き合い方について考え直すきっかけにしてほしいという狙いがありました。

プロジェクトが始まった背景を教えてください。

韓:もともとは「モノガタリ by mercari」を拡大させたいと考えていて、濱村さんにその相談をしたのがプロジェクトのきっかけです。

濱村:そもそも私と韓さんはプラチナムで同僚として一緒に働いていました。私が2009年入社で、韓さんは2014年入社です。同じプロジェクトを一緒に担当したこともありますよね。

韓:そうですね。その後、私は2018年の12月にメルカリに転職しています。

濱村:「モノガタリ by mercari」は相談をもらった段階で、すでに大きなインパクトを世の中に与えるポテンシャルがあると思いました。そこにメルカリの掲げる「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションと連動する発信ができれば、よりブランド価値をあげることができるのではないかと考えました。世の中の課題と関連づけてコンテンツを発信することで、より施策が意味のあるものになると思いましたし、発信した情報が世の中でさらに自走するのではと思いました。

そこで思いついたのが今回の「読むレジ袋」の企画です。初回提案時からメルカリの皆さんから良い反応をいただき、そこから内容を具体的にしていき、今のような形になりました。

レジ袋有料化という社会的関心事と組み合わせてインパクトを生み出し、メルカリ社のメッセージをより伝えやすく

なぜレジ袋だったのでしょうか?

濱村:「モノガタリ by mercari」の根底にある身のまわりのモノにも一つひとつに価値があるという考え方と、レジ袋有料化で消費者がモノと向き合うタイミングがぴったりと合い、ハッとする気付きの瞬間をつくれるのではないかと感じたからです。

また、これまでレジ袋に小説が載っているというビジュアルは見たことがなく、人々に大きなインパクトを与えるのではと思いました。権威ある小説家の方々に執筆いただいた作品を、あえて無料で配布するというギャップもインパクトが強く、SNSを中心に拡散されるシナリオが設計できました。

さらにすでにプラットフォームとして社会的に大きな存在であるメルカリだからこそ「世の中の動きに合わせて、意味のあるアクションをしてくれる企業だ」とブランディングしていくことに意義を感じ、その観点においても、社会的に大きなムーブメントであるレジ袋有料化をうまく活用できないかと考えました。

メルカリ社内では「読むレジ袋」の提案を受け、どう感じたのでしょうか?

韓:ただ話題になるだけでなく、やる意義があって、そこから人々の心を動かせるところが時流と合っているよねという話になりました。

メルカリは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションとしております。そのミッションを達成するための「Go Bold」、「All for One」「Be a Pro」の3つバリューがありますが、「令和Tシャツ」「売れる福袋」などは「Go Bold」にまだ誰もがやってない大胆にチャレンジした企画でした。今回の企画も「Go Bold」で斬新で話題のきっかけになりそうだと感じたので「何か生まれるかも」と、社内からは期待されていました。

重視するのは、パブリシティの成功だけではなく「社会の公器としてやる価値は何か」という問い

実際にプロジェクトをリリースしてみて、手応えはいかがでしょうか?

濱村:同社で過去に例がない程メディアに取り上げていただき、10番組以上のテレビ番組にて紹介されました。世の中のモーメントに上手く乗ったというのもありますが、生活者がこの企画の意図をきちんと汲み取り、発言してくれたことが話題になった要因だと考えています。多くの人が、モノの価値を問い直すきっかけにし、SNSを通すことでより広く世の中に伝わっていったのではないかと思います。

「このプロジェクトが何のために行われているのか」というところこまでSNS上で議論されているのを見て、メルカリ社が世の中に与えるインパクトを見える化できたのではないかと感じました。社会との合意形成を行うアクションであるPRに携わる者としては、非常にうれしかったですね。

韓:今回の成功は企画を考え、実行する上での一つの基準になったと思っています。それは単なるパブリシティの成功という意味ではなく、我々が社会の公器としてやる価値は何なのか?という本質を問うた時に、答えられるものであるのかということです。認知を取るなら、広告やプロモーション施策で十分ですが、メッセージ性という意味ではPRは欠かせません。今後、ブランディング戦略を組み立てるうえで、ただ話題にされることを狙うのではなく、「なぜやるか」というWHYを深掘りした上で、「どうやってやるか」のHOWをどう組み立ててメッセージを伝えていくかを、より一層考えていくことになりそうです。

世の中に問いを投げかけるコミュニケーションには「そのブランドがそう発信する意味は何か」が重要

濱村さんがコミュニケーションを設計するうえで一番大切にしている考え方を教えてください。

濱村:「そのブランドがそのメッセージを発信する意味は何か」という点を一番大切にしています。そこに違和感があると、生活者にメッセージが伝わりませんし、思わぬ形で叩かれたり炎上するきっかけにもなるのではと思います。

私自身、固定概念を壊し、世の中に問いを投げかけるコミュニケーションにこれまで多く携わってきましたが、その際には本当にそのメッセージをそのブランドが言うべきことなのか、そのメッセージの発信に嘘はないか、企業として取り組む実態とズレはないか、ちゃんと世の中の動きをとらえられているのか、をとくに意識しています。
そして矛盾や違和感があれば真正面から壊していきます。新しい価値はそこから生まれると思いますし、今の時代ではそのような姿勢のブランドが賞賛されると思います。

今のスタイルはどうやって確立したのでしょうか?

濱村:私が携わってきた仕事は社会に対して新たな価値を提案するプロジェクトが多く、それらに取り組む中で徐々に確立されていったのだと思います。

振り返ると、毎年お台場で開催される音楽フェス「ULTRA JAPAN」や、日本最大級のファッション&音楽イベント「GirlsAward」などエンターテイメントを通じてカルチャーをつくる仕事が多く、新しい価値提案によって新たな市場をつくることにチャレンジしてきました。

そんななか、バイラル動画が流行し、SNSをどう活用すれば生活者が振り向いてくれるのかを考えるようになりました。そこで、ブランドが生活者に伝えたいメッセージを、コンテンツに落とし込むという経験を多く積ませてもらいました。

経験を積むなかで、モノが売れるようになった反面、様々な企業がバズ狙いのコミュニケーションをやり始めており、差別化が難しくもなってきました。また、話題になり認知をもたらすことができているのですが、その後、そのブランドに何か残せているのだろうか?という疑問も感じていました。そんななか、日清食品様をはじめとする企業が他社とは違うポジションをとったバイラルコミュニケーションを駆使し、ファンを増やしている姿を見てきました。それこそがコミュニケーションの正しいあり方なのではないかと感じたんです。

それ以後は、ただバズを起こすのではなく、何のためにバズを起こすのからせるのかを考えるようになり、その結果、各ブランドがなぜそのアクションをを起こすのかを考え、伝えることを大切にしています。また、企画を考える時は「今までにないものをつくる」「他と違うポジションでモノを語る」「いろんな人がハッとして振り向いてもらえるような企画をつくる」ことを重要視していますね。

これからのPRに必要なのは、社会的関心に訴えかけ得るメッセージを設計し、アクションに落とし込む力

現在、メルカリとプラチナムが組んで仕掛けているプロジェクトがあれば教えてください。

韓:ハロウィンの時期に合わせた取り組みを実施しています。メルカリはハロウィンのグッズを販売しているわけではありませんが、ハロウィンの時期に、我々だからこそできる価値提供の形があるのではと考えています。

濱村:メルカリが提供できる価値は大きく2つで、1つはハロウィン自体を盛り上げることです。とくに今年はコロナ禍によって気分が落ち込んでいるので、オンラインやお家でのハロウィンをこれまで以上に楽しんでもらえればと思っています。そのため、31日まではハロウィン自体を盛り上げるための施策を行ないました。

もう1つは、毎年発生するハロウィン後のゴミ問題を解決することです。ハロウィン翌日の11月1日にメルカリ内でイベントを実施し、これまでゴミとして出されていたかもしれないハロウィングッズやコスプレ衣装が循環する仕組みをつくれたらと思っています。

必ずしも全てのハロウィングッズをメルカリに出品していただく必要はないということもポイントです。アップサイクル*というアクションや、来年まで持っておき、売れやすいタイミングで出品するなどの推奨も視野に入れています。循環型社会に一歩でも近づくために、使い終わったモノの再利用のあり方を提案することがメルカリブランドとして非常に意味のあるコミュニケーションになると考えています。

韓:このプロジェクトを進めるうえでも、社会の公器である立場として「なぜメルカリがやるのか」、「やる価値があるのか」を大事にしています。WHYの「なぜやるのか」の理由は、循環型社会をつくり、モノに対する向き合い方を変えていくというものです。その上で、今までチャレンジしていなかったHOWの手段を用いて、どう一貫性のあるメッセージを伝えられるかを考えています。

これからのPRに必要なことは何でしょうか?

韓:これからは、社会的なメッセージをつくる能力、キーメッセージを決める人がより重要になっていくと思います。それがPRそのものだと思うのです。メッセージを決め、かつそのメッセージを、手段を限定せずに世の中に発信できる人がコミュニケーションの領域では勝っていけると感じています。

濱村:おっしゃる通りだと思います。プロダクトやブランドがなぜ世の中に存在すべきなのか、そのストーリーを明確にし、それを象徴的に表現できるようなアクションを設計する力が、これからはより一層求められ、評価されていくと思います。ストーリーがきちんと組み立てられてないと、施策にも納得感がなくなるのです。

ストーリー設計のうえで一番大事なのは、世の中のモーメントをしっかりとらえること、さらに社会課題に取り組むことです。とくに今、コロナ禍によって社会課題は激増しています。それら一つひとつと向き合い「なぜこのブランドがこれをやるべきなのか」ということをきちんと整理し、大きなインパクトを与えられるアクションに落とし込む能力がPRには必要不可欠です。今後もWHYをとことん突き詰め、「なぜやるのか」「そこにやる価値があるのか」を大切に、コミュニケーションをデザインしていきたいと思います。
*アップサイクル:本来であれば捨てられるはずの廃棄物に、デザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品にアップグレードして生まれ変わらせること。

Related Articles関連記事一覧

コロナ禍だからこそ、エンターテインメントを。映画監督・俳優をも巻き込み、グッドデザイン賞を受賞した「ドライブインシアター2020」の舞台裏に迫る

コロナ禍だからこそ、エンターテインメントを。映画監督・俳優をも巻き込み、グッドデザイン賞を受賞した「ドライブインシアター2020」の舞台裏に迫る

コロナ禍で多くのイベントが中止になる中、今こそエンターテインメントの力で多くの人に夢を与え、世の中を応援したいと「ドライブインシアター2020」実現に向け走り続けていたチームがあります。その中心となったのが株式会社ハッチのシアタープロデュースチーム「Do it Theater」の代表を務める伊藤大地氏と、株式会社プラチナムの村山聡一氏です。構想から約10日で立ち上げたクラウドファンディングは大きな反響となり、映画監督・俳優・アーティストなど錚々たる方々からの賛同とコメントが寄せられるほど、大きなうねりとなりました。グッドデザイン賞を受賞するほどのプロジェクトはどう生まれ、どう実現したのか。その熱狂の舞台裏を追いました。

企業と社会のコミュニケーションが増大する時代の、PRの本質とは【アドテック東京2020「広告とPRの境界線」レポート・後編】

企業と社会のコミュニケーションが増大する時代の、PRの本質とは【アドテック東京2020「広告とPRの境界線」レポート・後編】

ベクトル取締役 吉柳さおりが登壇したアドテック東京2020「広告とPRの境界線」レポート後編です。PR施策を検討するときに重要なポイント、成功するチーム、そしてPRの本質とは何なのかについて議論が展開されています。

コロナ禍でPRはどう変化し、成功している企業は何が違うのか【アドテック東京2020「広告とPRの境界線」レポート・前編】

コロナ禍でPRはどう変化し、成功している企業は何が違うのか【アドテック東京2020「広告とPRの境界線」レポート・前編】

コロナ禍によりPRやコミュニケーションにも大きな変化が生まれ、PRの重要性が一層増してきています。そんな中、10月29日(木)に「アドテック東京2020」にて、PRの最先端を担うスピーカーが集い「広告とPRの境界線」と題したトークセッションが行われました。

Bloom&Co.×ベクトルの提携で、デジタル化していく世界に「運命の出会い」を生み出す。2021年以降のコミュニケーションの新潮流、ブランド×PRで描く「Branded PR」。

Bloom&Co.×ベクトルの提携で、デジタル化していく世界に「運命の出会い」を生み出す。2021年以降のコミュニケーションの新潮流、ブランド×PRで描く「Branded PR」。

2020年9月、株式会社ベクトルは、大企業からスタートアップまでさまざまな領域においてビジネスを持続的に成長させるためのマーケティング戦略策定から実行支援を手掛ける株式会社Bloom&Co.と業務提携を行いました。その目的や今後の展望について、Bloom&Co.社の代表取締役 彌野 泰弘氏とベクトル社の代表取締役社長 長谷川 創氏にお話を伺いました。

「熱」を帯びて、伝播する。デジタル全盛・激変する社会環境の中、PRだから提供できる、人間臭いコミュニケーション

「熱」を帯びて、伝播する。デジタル全盛・激変する社会環境の中、PRだから提供できる、人間臭いコミュニケーション

我々は「PRの力で商品や企業、ブランドの価値を創り、社会に貢献する=ONE MORE VALUE」というミッションを掲げていて、いいモノを世の中に広めるサポートを行っています。広告とPRの垣根を超え、あらゆるソリューションを駆使しながらコミュニケーションの戦略立案から実行までを行うのが特徴です。

社内外のプロフェッショナルと「最高のワンチーム」を組成。顧客起点でマーケティング・ブランディング・コマースまで一気通貫で支援。ブランデッドECの展開へ。

社内外のプロフェッショナルと「最高のワンチーム」を組成。顧客起点でマーケティング・ブランディング・コマースまで一気通貫で支援。ブランデッドECの展開へ。

僕が取り組む仕事は、代表の長谷川やグループ会社の経営陣から直接依頼されるケースが多く、従来のPR会社の範囲を超えたものがほとんど。結果的に、ベクトルグループにとっても新しい挑戦となるものが多いです。