金融業界から異色の転身。代表就任後3年で韓国法人を立て直し、ベクトル海外展開のマーケティングと財務基盤の中核的存在を目指す。

金融業界から異色の転身。代表就任後3年で韓国法人を立て直し、ベクトル海外展開のマーケティングと財務基盤の中核的存在を目指す。
コミュニケーション領域のFAST COMPANYとして「いいモノを世の中に広め人々を幸せに」というビジョンを掲げるベクトルグループ。コミュニケーションを軸に世の中の流れを捉えた様々な事業・サービスを展開することにより、常に進化を続けています。「Professional」ではイノベーティブな視点と彩り豊かな個性を活かし、活躍するグループ会社社員に、自身が取り組む仕事の社会的な意味や価値についてお話を伺います。

ベクトルグループは、中華圏およびASEANを中心としたアジア地域での事業展開を進めており、上海、北京、香港、インドネシア、ベトナム、タイ、台湾、広州に拠点を設置。2017年には、新たな事業拠点としてVector Korea Inc.を立ち上げました。この春新たにVector Com Inc.として発進する組織が、新たな市場でどのように事業を展開するのか。他の海外拠点とどのようにシナジーを生み出すのか。Vector Com Inc.で代表を務める権 益主(Kwon Ikjoo)氏に聞きました。
権 益主
株式会社ベクトルコム 代表取締役

延世大学卒業後、2000年株式会社サムスンクレジットカード入社。eBizチームにてデーターベースマーケティングを担当。その後、早稲田大学ビジネススクールに留学、MBA取得した後、Truon I&Cを創業。2007年11月、プレジアン証券を買収し代表取締役就任。韓国系大手証券会社である株式会社新韓金融投資(韓国系大手証券会社)の日本支店長を経てプライベートエクイティーファンドであるEast Investment Capital KK.でDirectorとして従事。
2017年9月株式会社ベクトル海外事業部に入社し、同年12月株式会社ベクトルコリア(当時)代表取締役就任。

金融業界から異色の転身。代表就任後3年で韓国法人を立て直し、ベクトル海外展開のマーケティングと財務基盤の中核的存在を目指す。

参照元: YouTube

韓国での上場を目指し、M&Aによる事業拡大を図る。

まず初めに、Vector Comの事業内容を教えてください。

韓国において、広告、PR、イベント開催など幅広い事業を展開しています。また、2020年9月にD2C事業を立ち上げました。事業展開内容も業績もさらに拡大していけるよう、環境を整えているところです。 今のところ右肩上がりの成長曲線を描くことができており、数年以内に韓国証券取引所での新規株式上場を目指して頑張っています。

日本と韓国のPR市場の違いを教えてください。

日本のベクトル社の売上高が今期の着地予想で370億円であるのに対し、韓国でNo.1のPR会社でも、その10分の1程度です。PR市場そのものの規模に大きく差がある背景には、メディアの影響力の衰退があります。特に紙媒体の力が弱く、もはや公共事業など一部の領域でしか紙媒体が活用されていない現状があります。また、SNSの影響力を活用したバイラルメディアの影響力が強まる一方で、従来のマスメディアの力がどんどん弱まっているのが現状です。

私が旧Vector Korea Inc.に参画して6ヶ月経った頃、現地で同世代のPR会社経営者に会う機会がありました。彼は8年間で、売上高で約3億円、利益が3,000~4,000万円程度に成長させていました。、8年という月日をかけた割には、その規模が想定よりも小さく、驚きました。

私はそれまでPR業界の経験はなく、かなり長いこと韓国を離れていました。そのため、当時の状況のまま事業拡大を行っても、会社を大きく成長させていくためには多くのの時間が必要になると考えていました。

そこで自分の得意なことを活かそうと考え、M&Aの検討を始めました。まずは、市場規模が大きい広告業界に参入するために広告代理店のM&Aを実施しました。その後PR会社の事業譲渡を受け、会社を成長させていきました。さらに2020年には、 デジタルPR・映像制作・教育コンサルティングを手がける3社を子会社化しています。

自分の数年後を予測したときに生まれる危機感から、金融分野での事業立ち上げに連続挑戦した20代。

権さんのご経歴を教えてください。

大学卒業後、韓国でサムスングループのクレジットカード会社に就職しました。仕事自体は順調でしたが、大手グループの中では数年後の自分のキャリアがある程度予測できました。その時に、自分はこのままではいけないという危機感を抱くようになりました。数年後にはあの人のようになり、さらにその数年後にはその隣の人のような立場になるのだろう。役員になるなんて夢のまた夢だと、、、。自分の人生が既に会社によって決められてしまっているような気がしたのです。それが嫌で、入社から2年後に退職をしました。
退職後は、日本の大学院に留学して起業のための勉強をすることにしました。実は親の仕事の都合で、幼少期に3年ほど日本にいたことがありました。留学当初はお金に苦労しましたが、日本の証券会社に口座を開設し、過去に先物取引をしていた経験を活かしてFX取引を行い、そこそこ稼ぐことができました。

当初は、その資金を元手に香港でヘッジファンドを立ち上げようと考えていました。しかし、大学院卒業後に、安定収益を得られるのは取引をする人ではなく、取引するシステムを提供している仲介会社だと気がついたのです。そこで、仲介会社を韓国で立ち上げようとしましたが、法的な理由で断念しました。。

その後も起業に挑戦しましたが上手くいかず、再び日本に渡ってM&Aの仲介業を行ないました。 その流れでご縁をいただき、大阪の小さな証券会社を買収し代表取締役に就任しました。そして、その会社を売却しようと動くなかで韓国の証券会社からオファーをいただき、その証券会社の東京支社の支社長に就任しました。

その後、その韓国の証券会社は日本から撤退。今度は日本のメガバンクグループ出身の方々にお声掛けいただき、プライベートエクイティファンドに入社しました。約2年勤めた後、中小企業の財務支援の仕事をしていた頃にベクトル社と出会い、ご縁あって入社することになりました。

金融畑を渡り歩く人生に突如現れた、韓国でのPR会社立ち上げという挑戦。

ベクトルに入社した経緯を、くわしく教えてください。

ベクトルと出会う以前は、金融業界を渡り歩く人生になるだろうと思っていました。ただ、経験を積むうちに、金融業界で勝ち上がるには莫大な資本が必要で、中途半端な資本力では太刀打ちできないと実感していました。

そんな悩みを抱えていた時、ベクトルの方から「韓国でイベントをやるから協力してほしい」と相談を受け、個人で請け負うことにしました。これまでの金融の仕事は資金を調達し、その資金を増やさなければというプレッシャーに常にさらされていました。ところがPRの仕事は、ある程度まとまった金額で仕事をいただきつつ、モノやサービスを広めることに純粋に打ち込むことができ、それが新鮮で非常に楽しかったんです。
未経験からの挑戦でしたが、それまでの金融領域から企業経営をサポートする仕事を通じてPRに関する一定の知識を得ていたので、不安は一切ありませんでした。
この仕事がきっかけとなり韓国拠点の立ち上げを一緒にやってほしいという話をもらい、ベクトルに入社しました。

赤字は罪。財務改革で基盤を固め、3年で20倍の組織に成長。

それまでとは全く異なる環境・文化であるベクトルに入社後、どのようなことをされてきたのでしょうか?

私が入社した時期は、オンライン広告サービスを手掛けていた韓国企業MicroAd Korea Inc.をベクトルがM&Aし、韓国に現地法人を立ち上げた直後でした。当時は、ほぼ何もない状態からのスタートで、約3坪のオフィスに社員2人、売上はほぼゼロ。最初はPRの知見もなければ、韓国内のネットワークもなく、日本から紹介される案件を担当するか、自分のつながりを辿って新規に提案をすることしかできませんでした。

しかし、半年後にはM&Aによって規模を拡大でき、3年目の現在は社員数が63名になっています。この成長の一番の要因は財務の健全化だったと思います。私が入社してすぐのVector Korea Inc.も、 M&Aした広告会社も財務的には綻びだらけの状態でした。それを個人投資家や金融機関と相談しながら、債務超過の解消、売上債権の流動化によってキャッシュフローの整備を行い、立て直していきました。
私は事業を運営する上で、赤字は罪だと思っています。一度赤字を出してしまうと、その翌年には新しいチャレンジができず、前年と同じことを繰り返すだけになってしまうからです。だからどんな手を使ってでも黒字にしなければならない。そうでなければ企業としての成長は望めないと考えています。

財務改善を梃子にした経営改善に注力することができた背景には、「強い責任感を持って仕事に向き合っている人には託して任せる」というベクトルの社風があります。ベクトルの代表である長谷川が、私がやりたいことを全面的に受け入れてくれたことが大きかったと思います。

Vector Com Inc. はベクトルの海外展開の楔になる。

今後の展望を教えてください。

2021年第1四半期には、4段階に分けて新規事業を発表していきます。

そのうちの1つが、つい先日日本でもリリースアウトした、豚肉の加工食品のD2C事業です。今、韓国では、コロナ禍により家で食事をする機会が増えた影響もあって、HMR(ホーム・ミール・リプレイスメント=家庭料理に代わる食事)市場が急拡大しており、その規模は年間5兆ウォン(約 4,700 億円)とも言われています。“レストランのように充実したありがたい一食”という意味を込めたブランド「サンクストラン」は、急速冷凍技術を適用し、食材の変形がなく新鮮で豊かな味をそのまま保存した冷凍完全調理食品であり、容器のまま電子レンジで簡単に調理し料理を楽しむことができます。
そしてこれを機に、メディアコマース領域を軸に事業を大きくしていきたいと考えています。自分たちから攻められるビジネスは何かと考えたときに、メディアコマース、日本で言うところのD2Cのビジネスモデルにたどり着きました。
エージェンシー業務は、クライアント企業からのご要望に左右されがちという点で、どちらかというと受動的なビジネスモデルだと捉えています。PRの市場規模がまだ小さい韓国では、待ちの姿勢のビジネスだけの展開ですとコロナショックのような不測の事態において手の打ちようがありません。

今後はベクトル内の各海外拠点と共に、それぞれの市場に適したD2Cプロダクトを新たに創って展開していきたいと考えています。自分たちのプロダクトを自分たちで売るとなると、自社でマーケティング投資をしなければなりません。しかし、現状は海外の各拠点のみではそれに耐え得る資金力はありません。そこで、資金面でのリスクはVector Com Inc.で持ち、各拠点で業績を伸ばして成長できるモデルを作っていきたいと考えています。

今は韓国取引所(KRX)での新規株式上場をひとつの目的としていますが、個人的には1つの国にこだわっても意味がないと思っています。特に韓国の場合は、市場規模が小さいわりに多くのプレイヤーがいます。そんなマーケットで戦い続けるよりも、機会があればどこにでも出て行くというスタンスでいます。
それにはリスクを伴いますが、そのリスクに耐えられるだけの組織と財務体制を引き続き構築していきますし、世界全体をマーケットと捉え、戦える体制を創っていきます。

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