医療の情報格差を世界からなくす。ベクトルグループが医療領域に参入する背景と意味。

医療の情報格差を世界からなくす。ベクトルグループが医療領域に参入する背景と意味。
「運命の出会いを、ヒトとモノとコトの間に」という世界観を掲げるベクトルグループ。
コミュニケーションを軸に世の中の流れを捉えた様々な事業・サービスを展開することにより、人々の暮らしに彩と運命の出会いを添えるべく、常に進化を続けています。「Professional」ではイノベーティブな視点と彩り豊かな個性を活かし、活躍するグループ会社社員に、自身が取り組む仕事の社会的な意味や価値についてお話を伺います。

ベクトルグループはこの秋、株式会社ビジネスインテリジェンスと共に、医療分野に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)およびコミュニケーション事業を行う新会社メディカルテクノロジーズを設立しました。今回は、代表取締役に就任した鈴村健二氏に、合弁会社設立の経緯と、ベクトルグループが医療の領域に踏み込む意味、中長期的な展望について聞きました。
鈴村 健二
メディカルテクノロジーズ株式会社

岡山大学卒業後、2002年キリンビール株式会社入社。医薬事業本部にてMR(医薬情報担当者)として従事。その後、株式会社サイバーエージェントでの自社メディアの広告営業、株式会社ハイファイブの設立メンバー取締役を経て「メディカルマーケティング」の株式会社ビジネスインテリジェンスを創業。2020年9月、株式会社ベクトルとの合弁会社であるメディカルテクノロジーズ株式会社を創業、代表取締役に就任。

ベクトルの「広める力」と医療マーケティングの知見によるシナジーに期待

最初に、新会社の概要について教えてください。

医療業界のデジタルトランスフォーメーション(以下DX)事業をはじめ、広告・PRも含めたコミュニケーション事業もあわせて提供する、医療業界に特化した新会社・メディカルテクノロジーズを、ベクトルと私が経営するビジネスインテリジェンス(以下、BI)の合弁で9月1日に設立しました。

BIは、私自身にMRの経験とインターネット広告業界の経験があったことから2008年に創業した医療マーケティングカンパニーです。メディカル領域に特化した広告・PR代理店として、主に製薬会社に対し、医療用医薬品の医療従事者に向けたマーケティングの戦略策定から実行、一般の方向けの「疾患啓発」と呼ばれるブランディングなどに取り組んできました。

今回ベクトルとBIが組むことで、私たちの医療業界におけるリレーションや知見と、ベクトルグループが持つ「広める力」やデジタル広告・サイネージ事業で培われたコミュニケーションテクノロジー等を組み合わせ、医療業界が抱えるさまざまな課題を、DXで解決していく考えです。

具体的にどのような事業を展開されるのでしょうか。

大きく2つあります。1つは、医療情報データプラットフォームの構築です。

今年、新型コロナウイルス感染症が広がったことで、例えば「マスクの着用は新型コロナの感染を防げるのか」といったような、医療に関する情報の科学的なエビデンスへの関心が高まりました。このことは、皆さんも身をもって感じているのではないでしょうか。マスクを着けるべきか否かについても、複数の“専門家”がテレビ番組に出演し、それぞれで言っていることが違うこともありました。そんな時、誰でも簡単に論文や臨床試験のデータにアクセスできる仕組みがあれば、その情報をもとに自分で判断することができるでしょう。

ただ、単に情報をデータベース化しただけでは、情報にアクセスはできても専門知識を持たない人には理解が難しいかもしれません。そこで、これは“例えば”の話ですが、スーパーで陳列されている食品にスマートフォンをかざすと、ARアプリで成分・添加物などのデータやグラフが表示されるようにするなど、一般の方にも分かりやすい形でデータベースから欲しいデータを取り出せる、そんなプラットフォームを構築したいと考えています。

もう1つは、「診察室のDX化」です。皆さんが病院やクリニックに行くと、まずは問診を受けますよね。問診の際、医師と患者さんが持つ情報の非対称性から、患者さんの心配事が上手く医師に伝えられなかったり、聞きたいことを聞けなかったりということが起こりがちです。また、今後オンライン診療が普及していくと、そうしたコミュニケーションから生じる不安・不満から、患者さんが途中で離脱してしまい、そのまま症状を悪化させるといったケースが想定できます。

そこで、問診の内容をデータ化し、それを解析することで、例えば特定の疾患において診療の離脱につながりそうなコミュニケーションのパターンを明らかにして離脱を防止する、あるいは属人的になりがちな問診の質の向上に役立てる、そのような仕組みを構築し、医師・医療機関向けのSaaSとして提供していきたいと考えています。

世界で最初に「高齢化社会」に突入した日本で医療業界に参入する意味

今回、合弁会社を立ち上げることになった背景を教えてください。

まず、私たちBIの立場からお話しすると、創業以来、社員十数名のスモールビジネスで堅実に業績を上げてきました。ただ、社会への影響力という意味では、そう大きくはありません。これ以上の、非連続かつ質的転換を伴う成長を望むなら、少数精鋭にも限界があり、規模の力も必要になる。そのためにはどこかと手を組むべきなのではないか。ここ数年はそんなことを考えていました。

また現在、医療がITとの結びつきを強める中、ヘルステックの領域でさまざまなスタートアップが生まれ、今までにないサービスを世に送り出しています。 彼らと同じ領域にいながら、マーケティングという事業の特性上どうしても現在のお客様である医師や製薬会社の方のための「支援」にしかならない。私たちも、医師だけでなく一般の方たちにも提供できる自社サービスをつくり、社会をよりよく変えていきたい、チャレンジしたい、そんな思いもありました。

現社長 長谷川との接点は。

最初に会ったのは、5年ほど前です。あるお仕事でご一緒したのですが、話を聞くと出身高校が同じで。ここ数年は、月1回ほどのペースでビジネスの相談など様々な意見交換をするようになりました。

長谷川は、常に最前線にいていろいろな人から話が持ち込まれますし、新しいことに挑戦しなければならない、プレッシャーの大きいポジションにいますよね。にもかかわらず、あらゆることをまずは受け入れて、ビジネスを着実にドライブしていく方です。それを見て「すごい人だ」と、素直に憧れていたのと同時に、私もそのようなプレッシャーの中に身を置きたいと思うようになりました。

今回の合弁についても具体的な話を持ちかけたのは私からでした。自社サービスをつくりたいということはすでに話していましたし、その構想には長谷川のアイデアも取り入れていきたかった。私たちがサービスをつくったとしても、ゼロからそれを構築することは難しいと考えていたからです。私としては、これまでよりも大きなアセットを使い、新たなサービスの創出にチャレンジしていきたいと考えています。

ベクトルは、新会社設立に対してどのような思いがあったのでしょう。

あくまで「私から見て」の話になりますが、ベクトルも最近は医療系の企業からの相談を多く受けるようになったと聞いています。そして、グループとして医療分野に取り組んでいきたい意向があることも聞いていました。であれば、一緒にやりましょうという流れでしたね。

医療のマーケットは、参入障壁が高いと感じられがちです。実際、プロモーションコードなどの規制が厳しく、そういう側面がないわけではないのですが、ちょっとしたきっかけで一歩足を踏み入れると、取り組みやすく、やりがいがあることも分かる業界です。

「食」「エネルギー」「医療」の3つの領域は、日本にとって生命線です。「食」「エネルギー」に関して自給自足が難しい中で唯一、内需でマーケットが伸びているのが「医療」の分野です。人類がまだ経験したことのない先進国の高齢化社会に、世界で最初に突入する日本がどう対処していくのか、世界が注目しています。そんな中、2050年に医療がどうなっているか、そのロードマップを考えるのに一番面白い領域だと思います。ベクトルとしても、そのマーケットの大きさとダイナミズムを感じ取られているのだと思います。

コミュニケーション・ビジネスに「医療」の観点を組み込む

新会社のミッションをどのように考えていますか。

「医療情報格差」を世界から無くしたいと考えています。どの国のどの医療機関に行っても適切な診断が受けられて、適切な薬剤が処方され、適切な治療が受けられる。そしてその全体の水準を高めたいという思いがベースにあります。

日本は全体としてみれば医療の水準は高いですが、医療機関や医師によって診療方針等はまちまちな部分もあります。診察や薬剤、治療法などが属人的になっているケースも少なくありません。そうしたギャップを無くし、医療水準を高いレベルでフラットにしていくこと。それが、 メディカルテクノロジーズのミッションになります。

中長期的な展望についてお聞かせください。

医療業界は、デジタル化が進んでいる領域も一部ありますが、全体としては遅れているといえるでしょう。また、医療というものはアカデミックなものでもあり、専門が細分化していることから、業界に独特の階層構造と縦割りの文化があります。そしてそれが、時に患者さんに不条理を強いるケースを、これまでの経験の中で見聞きしてきました。そこに、デジタルの力を持ち込むことで、業界全体に変革をもたらしたいと考えています。

ベクトルグループ全体として、コミュニケーション領域のSPA(製造小売)カンパニーを目指す中、その全てのプロセスに「医療」の観点を入れていくことが当社の役割だと認識しています。

コミュニケーションによって切り拓ける余地が大きい医療マーケットにおいて、さまざまなビジネスを創出していく、その上でDXが欠かせないものとなるわけです。恐らく長谷川もそう考えていると思いますし、私もこれからのビジネスを楽しみにしています。

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