データをユーザーへ返還し、資産化できる社会へ。 「プライバシーテック」を機軸に描く巨大なIDプラットフォーム構想。

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「運命の出会いを、ヒトとモノとコトの間に」という世界観を掲げるベクトルグループ。コミュニケーションを軸に世の中の流れを捉えた様々な事業・サービスを展開することにより、人々の暮らしに彩と運命の出会いを添えるべく、常に進化を続けています。「Professional」ではイノベーティブな視点と彩り豊かな個性を活かし、活躍するグループ会社社員に、自身が取り組む仕事の社会的な意味や価値についてお話を伺います。

今回は、2020年にChief Privacy Officer(CPO)・新規事業開発室室長に就任し、グループ内のPrivTech株式会社代表取締役となった中道大輔氏に参画の背景から、中道氏が推進する「プライバシーテック」のビジョンについて、お話を伺いました。

新規事業でプライバシーテックを提案

中道さんはヤフー、ソフトバンクなど、様々な企業で事業の戦略策定や立ち上げをされてきました。今回、どんな経緯でベクトルグループに参画されたのでしょうか。

2019年の4月ごろ現代表の長谷川に会ってて、「データを使ったビジネスをやりたい」と相談されたことがきっかけです。

僕はその頃ソフトバンクに在籍しながら、ヤフーを兼務しており、両者を横断したデジタルマーケティング事業や新規事業を見ていました。加えて、2016年ごろから副業もしていて。新規事業が好きなので、コンサルやIPO後の戦略提案などをやっていました。その中で、知人を介して長谷川と出会ったんです。

「ベクトルの中で持っているデータを使ったビジネスができないだろうか」と相談されました。そこで1ヶ月くらい、ベクトルグループのNewsTVやスマートメディアなど、いろいろ調べてヒアリングさせてもらいました。

その結果、当時のままではデータを使ったビジネスをやるのが環境的に難しいというのが僕の結論でした。しかし代替案として、PRに強みを持つ会社ならではのもっと公平中立な立場で、データを正しく取り扱う新規事業はどうですか?と提案したんです。

今は、プラットフォーマーが「企業」を主語にして個人のデータを吸い上げ、ユーザーには分かりにくいかたちで広告などに利用してマネタイズしている状態です。そんな現状に対して、世界ではデータの主導権をユーザーに戻そうという流れが起きているんです。データ流出騒動があったことや、情報銀行が生まれたことで、そういった動きが加速しています。

そこで、プライバシーを守りながらデータを活用する「プライバシーテック」を推進していこうと提案しました。「プライバシーテック」という言葉は、日本で初めて 僕らが言い出したと思います。

ープライバシーテックを、ベクトル社で推進しようと思ったのはなぜですか。

ベクトルは、PR領域だけではなく非PR領域の新規事業にも力をいれています。そこが一つの理由です。コア事業のPRと必ずしも事業シナジーがなくとも、新領域にチャレンジできるというのは、事業家の僕からしたらとても魅力的なポイントです。
また、事業ポートフォリオ的に見ても、プライバシーテックをやるのはアリだなと感じたんです。データを持っていないことが逆に強みになると思いました。公平な立場で企業とユーザーの間に立ち、プライバシーやデータを守るというポジショニングです。

市場を見てもブルーオーシャン。本当に誰もいないんですよ。これから市場ができていく領域で、かつグループでPR会社を持っているのはすごく強いです。例えば僕がスタートアップでプライバシーテックをやろうと言っても全く広まらないはずです。でも、ベクトルグループだと、PRの力を使って大手メディアに取り上げてもらいやすくなるわけです。プライバシーテックだけでなく、「日本で初めての〇〇事業」的なことをやる場合、PR領域を親会社がおさえてくれているのは、とても心強いです。これを心底理解しているのは、たぶん僕くらいですが(笑)。

あとは、代表である長谷川の意思決定のスピードが速いことも重要でした。新規事業は、トップがやると言わないと成立しません。部長クラスがいくら言っても、組織を動かせないんですよね。ソフトバンクだって、孫さんのひと言で事業が動いてました。なので長谷川のスタンスが明確だというのはすごくいいと思いました。

ユーザーのプライバシーを守り、企業とユーザーの架け橋に

改めて、中道さんが代表を務めるPriv Techの事業内容を教えてください。

まず、個人情報保護法が改正されるので、そのタイミングで必要になるソリューションを提供しています。今後は、cookieを介して得た情報が個人情報と紐づく場合、事前にユーザーに同意を取る必要が出てくるんですね。その同意を正しく取って管理するための、「Trust 360」という商品を出しています。「コンセントマネジメントプラットフォーム(CMP)」と言われる商品ですね。

例えば、ウェブサイトを訪れると出てくる、「Cookieを使っています、同意してください」という同意バナー。あれを表示して、そこで取得した情報を管理したり、他社システムと連携させていくことができます。

法律はおそらく1年半後に施行されるので、そこまでに導入社数を伸ばしていきたいと思っています。デジタルマーケティングを頑張っているような企業の多くが対象になりますね。

ただ、法改正があった後でも、引き続きユーザー側が取られているデータを意識することはあまりないと感じています。むしろ、ウェブサイトを見ていて同意バーナーが出ることによって、ちょっとうっとうしく感じるはず。僕らは同意管理ツールを入れましょう、法律を守って下さいと企業に提案していますが、それはユーザー側のUI、UXを損なう可能性も含んでいるのです。インターネット社会のUXの低下は、僕らの望むことではありません。

そこを改善するために、実はユーザー向けに、「PRIV ブラウザ」というものもローンチしました。まだ詳細はお伝え出来ないですが、ユーザーのプライバシーやデータを守りつつ、UIやUXを考慮したサービスにしていきたいと考えております。
目指す世界観としては、Priv Techが企業とユーザーの間に立ち、両者間の架け橋になっていくイメージです。

個人がデータを資産化できる社会を

ひとつのソリューションとしてだけでなく、toC、toBの両方をステークホルダーとした構想も描いていらっしゃるんですね。グループ全体を含め、今後の展望を教えてください。

toCの「PRIV ブラウザ」と、toBの「Trust 360」が広まった後に、見ている世界観としては、ユーザーが自身のデータを資産化できるようなイメージです。
まだまだ構想段階ですが、Priv Tech事業として狙う本丸はここです。
巨大ITプラットフォーマーによる中央集権的なデータやビジネススキームを変えていきたいと思います。もっとユーザーに権利を返し、データのフェアユースを進めていきたいと思います。

また、ベクトルは東南アジア圏にオフィスがあるので、そこで「Trust 360」のテスト営業をしてもらっています。今はまだリサーチ段階に近いですが、反応が良ければ海外に本格的にセールスしたいなと。せっかくデジタルの業界にいるので、日本市場にこだわる必要はないですよね。

これまで仕事をしてきて、儲かるだけの事業は高確率で立ち上げられるようになりました。でも、儲かるだけが正しいというのは違うなと思うようになりました。どうせやるんだったら、大義ある事業、ちゃんと後世に残るようなビジネスを創りたいと考えるようになりました。これに関しては、長谷川やPriv Techのメンバーたちとも目線が合っています。日ごろから「大儀ある事業を」という言葉を使い、意識しています。

今までのキャリア上、僕はまさに、事業を作る中でユーザーのデータをある種搾取して、そのデータをマネタイズしてビジネスをやってきました。だからこそ、この事業をやる意味がある。罪を償うじゃないですけれど、ユーザーにデータを返して資産化してもらうというこの事業は、僕だからこそできる事業だと思っています。

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もともと、ソニーグループはベクトル社とお付き合いがあって、さまざまな事業におけるPR業務をサポートいただいて来ました。特に、ソニー銀行の立ち上げや、新サービスのNURO 光など、新しく立ち上げたサービスのPRにおいては、インパクトのあるプロモーションを成功させてきた実績があります。